ひともと銀杏葉は枯れて
庭を埋めて散りしけば
冬の試験も近づきぬ
一句も解けずフランス語
(「酒、歌、煙草、また女ー三田の学生時代を唄へる歌」『閑談半日』昭和9.7 白水社)
佐藤春夫(明治25.4.9~昭和39.5.6 詩人・小説家)がこう唄ったのは、慶應義塾大学三田キャンパスの銀杏の木。
慶應の三田キャンパスには銀杏の木が何本もあるので、どの木を詠んだのか特定されてはいませんが、三田の銀杏といえばこの中庭の大銀杏。
この銀杏が金色に色づいてくると、春夫のこの詩を思い出します。
詩人も、試験には苦労したんですね。
三田キャンパスの大銀杏。
もう一本は、塾監局玄関前の銀杏の木。
この木は、森鷗外(文久2.1.19(陰暦)~大正11.7.9 小説家・医師)が、慶應で「審美学」の講義をしていたころ、いつも馬を繋いでいたといわれている木です。
(森鷗外)
鴎外は軍医・軍人であったので、移動は騎馬で。慶應へも馬通勤だったのですね。
旧図書館の赤レンガに、金色の銀杏が映えてきれいです。
慶應の銀杏といえば、横浜日吉キャンパスの銀杏並木も見事です。
この銀杏並木が植えられたのは昭和10年。
その2年後、芥川龍之介の長男でのち俳優となった芥川比呂志(大正9.3.30~昭和56.10.28 俳優・演出家)が、慶應の予科に入学してきました。今では立派な大木の並木となったこの銀杏も、当時は比呂志の背丈ほどしかなかったのだそうです。
(芥川比呂志)
日吉の銀杏並木は約百本の木々が、美しく円錐形に剪定されて立ち並んでいます。
この並木は、日吉キャンパスのシンボルであると同時に、日吉の街のシンボルでもあり、近隣住民がごく日常的にこの道を通り抜け、銀杏を愛でたり、銀杏の実を拾う姿も見られます。
三田祭も終わり、静けさの戻ったキャンパス。
深けゆく秋を想いながら、萬來舎で美味しいモンブランを。
東京都港区三田2-15-45
神奈川県港北区日吉4-1-1
参考文献
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