志賀直哉(明治16.2.10~昭和46.10.21 小説家)の「小僧の神様」(大正9『白樺』)のお鮨屋さんのモデルか!?といわれる鮨店。

日本橋室町にある「蛇の市本店」です。

「小僧の神様」は丁稚奉公の小僧仙吉と、富裕紳士Aが屋台の鮨屋で遭遇することから始まる物語。
小僧はお使いの電車賃を節約した小銭を手に、「一つでもいいから食いたいものだ」と憧れの鮨屋に行くも満足に食べられるはずもなく、恥ずかしく惨めな気持ちで店を出ることに…。そこにたまたま居合わせた紳士Aが、後日偶然にも小僧さんに出くわし、一案練って小僧さんにたらふくお鮨をご馳走し、小僧は紳士Aを神様のように感じてしまうのでした。

日本橋の「蛇の市」は、その舞台となった屋台の鮨屋ではといわれているのです。

現在の「蛇の市」は日本橋室町あじさい通りに店舗を構えていますが、はじまりは屋台から。
明治22年、まだ日本橋北詰に魚河岸があった頃、「蛇の目鮨」という屋台の鮨屋として創業しました。
(志賀直哉)
関東大震災後築地に移転したものの、戦後日本橋に戻り、最初の店舗をむろまち小路沿いに構えています。その時に、屋台の頃からの馴染みであった志賀直哉が、偶然向かいにあった武者小路実篤(明治18.5.12~昭和51.4.9 小説家)の娘が営んでいたという喫茶店から、初代店主寶井市太郎目撃し「おお、蛇の目の市ちゃんではないか。どうしていたかと思っていたよ。」と劇的な⁉再会を果たし、志賀の言う「蛇の目の市ちゃん」という呼び名から、現在の店名「蛇の市」になったのだそうです。

「小僧の神様」には鮨屋の店名も場所も明記されてはいませんが、仙吉の奉公する秤屋のある神田から使い先の京橋への途中にあり、志賀に馴染みのある店ということで、「蛇の市」が舞台なのではないかと考えられているようです。

店主はなんと、江戸の俳人松尾芭蕉(寛永21~元禄7.10.12(陰暦) 俳諧師)の門弟寳井其角(寛文1.7.17~宝永4.2.30(陰暦) 俳諧師)の子孫にあたる方なのだそうで、何かと文学に縁のあるお鮨屋さんです。

「蛇の市」のお鮨は、砂糖を使用しない江戸前伝統の赤酢の酢飯。穴子の煮詰めは創業当時から継ぎ足しされているものを使っているのだそうです。

老舗鮨店というと何だか敷居が高そうですが、ランチだと本格的な江戸前鮨も気負わずいただけます。

小僧と紳士のやり取りと、志賀直哉と「蛇の目の市ちゃん」のやり取りに思いを馳せながら、粋な江戸前鮨に舌鼓を打つのはいかがでしょうか。

蛇の市本店
東京都中央区日本橋室町1-12-10
☎0332413566
営業時間 11:30~14:00
16:30~22:30
定休日 日・月曜 祝日
参考文献
『志賀直哉集 新潮日本文学8』志賀直哉 1969.6.12 新潮社
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