「行きませう。上野にしますか。芋坂へ行って団子を食ひませうか。先生あすこの団子を食つた事がありますか。奥さん一返行つて食つて御覧。柔らかくて安いです。酒も飲ませます。」⦅「吾輩は猫である(五)」夏目漱石『ホトトギス』第八巻第十号 明治38.7.1⦆
夏目漱石の通称「猫伝」こと「吾輩は猫である」に登場する、猫のご主人苦沙弥先生と多々良君の会話にでてくるお団子。それがこの「羽二重団子」です。
店名もズバリ『羽二重団子』は、江戸時代文政2年の創業。
東京は根岸、芋坂の脇にあるお団子屋さんです。
開業当初は『藤の木茶屋』と称していたそうですが、供する団子が絹の羽二重(柔らかく光沢のある絹織物の一種)のようにきめ細かくうまいと評判になり、団子は「羽二重団子」と呼ばれるようになり、店名もいつしか『羽二重団子』になったそうです。
夏目漱石(慶応3.1.5(陰暦)~大正5.12.9 小説家)
「羽二重団子」は、甘いもの好きの漱石はじめ、漱石の友人でこの界隈に住んでいた正岡子規、その他泉鏡花や田山花袋、司馬遼太郎などなど、数々の文士から愛され、作品に登場しています。
正岡子規(慶応3.9.17~明治35.9.19 歌人・俳人)
正岡子規の句には、
「芋阪の團子の起り尋ねけり」
「名物や月の根岸の串團子」
などなど数詠まれ、店の脇には子規の句碑も据えてあります。
「芋坂も團子も月のゆかりかな」
「羽二重団子」の由来を記した看板と「王子街道」の碑も。
店は入り口を王子街道に面し、脇に芋坂。
芋坂は、坂とはいっても傾斜はなだらかで、現在の道は、坂といわれなければわからないほど。
店内では飲食もでき、団子と煎茶や抹茶のセットをいただくことができます。
団子型に繰り抜かれたテーブルもおしゃれ。
もちろん持ち帰りも。
「羽二重」の名のとおり、ほにゃっと柔らかく、甘すぎない上品な餡、みたらしの醤油も香ばしい、おいしいお団子です。
包装紙もかわいらしい、現在でも人気のお団子屋さんです。
羽二重団子
東京都荒川区東日暮里5-54-3
☎0338912924
年中無休 9:30~17:00(月~金) 10:00~17:00(土・日・休日)
参考文献
『漱石全集 第一集』夏目金之助 1993.12.9 岩波書店
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